津福今町の家

House in Tsubukuimamachi / 2015 /

家は3度建てると納得のいくものができると聞くが、建主にとって3度目の建築がこの計画。
敷地は、高度医療都市としても知られる福岡県久留米市。緊急車両の往来が激しい国道付近の住宅地で、とりわけ防音対策は必須であった。3方には住宅が連なり、東側一方にはいずれ量販店が建つであろう広々とした空地がある。その向こうに国道が走る周辺環境で、四方いずれも外に開くことは考え難い。そこで、玄関となる幅600mm(型枠1枚)の開口以外を重厚なRC壁で被う、単純明快で閉じた構えとした。重厚な壁は喧噪からの遊離と、むしろ開放的な私生活を約束する。その壁に守られた東側の庭は、いわば緩衝空間となる。庭に面する居間には良質な光が採り込まれ、静謐で豊かな在処となる。この住宅に限らず設計に着手する際は、建主が身を置く室内空間を最優先し、特に身体に近い素材をじっくり吟味するようにしている。居間のL型の対称に配置した壁は、スギ小幅板を型枠とした240mm厚のコンクリート打放し。食事室の壁は、45mm厚の無垢ニヤトーに深く決りを入れた材。そこから中庭まで続く床の磁器タイルは、この空間のため焼かれた。これらすべては大工や職人による丹念な手仕事の結実である。 そんな素材で形成された空間は、身を置く者に量感を伝え、どこか心地よく、美しい佇まいになると信じている。しかし、建築の本質は構造である。真摯に取り組まれた建築は、RC造・木造に関わらず、構造体が露となる上棟時にその本質的な美しさを感じさせる。その『途上の美』を生かしたいと常々思っている。
この場に必然的な建築を目指したつもりだが、最善だったかどうか解が出るには年月を要するであろう。だが幸い、建主には3度目のこの建築での生活を喜んでいただいている。これが終の住処となり、子から孫へ引き継がれてゆく建築になることを望む。


居間から中庭を見る。開口高さは天高3,130mmの半分の1,565mmとし、開口と垂れ壁の境目が目線高さにくるようにしている。横いっぱいの大開口でありながら地窓のように落ち着きをもたらす。


居間。


食事室・居間・中庭に、床の磁器タイルが延びる。


居間から食事室を見る。


食事室。壁は45mm厚の無垢ニヤトー決り材。


食事室から居間・中庭を見る。


居間は左奧の食事室へ続く開口を軸に対称を成すL型のコンクリート壁に囲まれており、左手前にその小口が見える。


玄関。茶庭の杉苔と飛石が見える。


玄関扉はスチール框内に、ウェンジ・カリン・アッシュの3種で編むように組んだ木格子。


2階廊下。右手は寝室へ繋がる前室の開口。


主寝室。茶庭上部に面する。


寝室。中庭に面し、プライバシーが保たれている。


西から見る全景。


東から見る全景。


中庭。雨樋は真鍮で製作。


西側から見る夕景。正面の低層のヴォリュームは車庫、左手の明かりの漏れるスリットは幅600mmの玄関。


西側から見る夕景。スリット奥にあるPH Wall(Poul Henningsen)が来客を出迎える。


外壁のスリットから中に入ると左手に茶室前の茶庭が広がる。


客人は苔むす茶庭に設えた躙り口より招く。


茶室。躙り口上部の開口部は連子窓。連子は6分の女竹。障子は石垣張り。


水屋。


Photo : Ken’ichi Suzuki


概要

設計 : 下川 徹 (担当 / 種子島由佳)
構造 : Atelier742 (担当 / 高嶋謙一郎)
照明 : IMMAGE (担当 / 山川幸祐)
施工 : 大石建設 (担当 / 水城一美 棟梁 / 大石哲郎)

所在地 : 福岡県久留米市
用途 : 専用住宅
主体構造 : 壁式鉄筋コンクリート造
規模 : 地上2階
建築面積 118.17㎡
延床面積 151.53㎡
設計期間 2013年8月~2014年5月
工事期間 2014年6月~2015年2月


掲載誌

『JA』102号 / P.14~15 (新建築社)
『新建築住宅特集』2015年7月号 / P.48~55 (新建築社)


模型 / 中庭から眺める